提供する日本酒は「純米酒」、1杯100ml、60minute利き酒コース(飲み放題)など、お客様に日本酒を気軽に楽しんでいただくことをコンセプトに立飲みスタイルの日本酒バーを現在、5店舗展開する「純米酒専門YATA(やた)」。
YATAでは、多くの唎酒師がスタッフとして活躍していますが、同店代表・山本将守さんに「唎酒師の役割」をお伺いしました。

 
YATAを開業されたのは、どのような経緯からでしょうか?
 家業が酒屋なのですけど、私、お酒飲めなかったのです…

簡単に言えば、飲めなかった私が日本酒に出会って、その虜になってしまいました。もちろん、唎酒師も取得しましたが、学ぶたびに、知らなかった魅力を知り、関わる全ての人に尊敬の念を抱くようになりました。こんなに素晴らしい日本酒を、多くの人に広めたいと思ったのがすべてのきっかけです。

 
YATAは、どんなお店なのでしょうか?
 日本酒にネガティブなイメージを持つ方は多いです…

YATAを開業するに際しては、日本酒のイメージをポジティブで平和の象徴である日本の文化に変えたかったのと、オシャレで魅惑的な価値を皆様に見出していただきたいと考えました。特に、日本酒の初心者の方でも楽しめる、そんなお店を目指し、今では多くの初心者の方に日本酒の魅力を知っていただいています。
YATAには日本酒を楽しんでいただくために鉄則(笑)と言われる、お客様にお願いしているルールがあります。日本酒をYATAなりの角度で心から楽しんでいただきたいという思いで運営していますので当店の意向にそぐわない楽しみ方をされるお客様には、 不本意ではありますが退席をいただく場合もあります(笑)。

 
意向にそぐわないとは?(笑)
多くのご支持をいただいている飲み放題の利き酒コースの場合…

多くの銘柄、種類をご用意していますが、1杯は50ml、同じものを2杯飲むことはできません(笑)。だって、いろんな日本酒を知っていただきたいし、楽しんでいただきたいですから。また、アラカルトでは、私が選んだ至極の一杯一杯を楽しんでいただきます。どう楽しむかは、お客様次第ですが、私にとっては、お客様1人1人とのまさに真剣勝負です。
強いて言えば、こういう思いをもってお客様にお飲みいただく日本酒をご用意していますので、酔うことだけを目的にYATAにいらっしゃらないでくれ…くらいでしょうか(笑)。

 
YATAでは、多くの唎酒師がお客様の接客をしていますが
日本酒の魅力を知っていただくためには、提案や説明が絶対的に必要です…

日本酒そのものの説明は当然ですが、その背景にある様々なことも。たとえば、製造元のストーリー、蔵元や杜氏の人となり、原料だったり製造方法だったり、味や香りはもちろんですが、それら全部が商品の魅力。
さらに、その日本酒の楽しみ方。一緒に食べるならどんな料理が良いか、温度はどのくらいが良いか、酒器はどれが良いか、次に飲むのは、どの日本酒が良いか…私も唎酒師ですが、キリがありません。
唎酒師であれば、こういったことが必ずできるというよりも、唎酒師は、こういったことを行ううえでベースとなる知識や能力を身に着けていますから、YATAのスタッフには当然、唎酒師が多くなります。

 
スタッフの人材育成についてはどのようにお考えでしょうか?
 日本酒をご提案やサービスを含めた接客については…

唎酒師を取得の有無は別にして、唎酒師の養成カリキュラムのような内容を身に着けていただきたいと思っています。私も唎酒師ですし、スタッフにも多くの唎酒師がおりますので「共通言語」的な役割も持ちますので、そのベースは必要かと考えます。
まあ、そこまで研鑽していただけるのであれば、お客様への説得材料にもなりますので唎酒師を取得して欲しいですが(笑)…もちろん、会社としても唎酒師を認定するSSIが用意する法人/賛助会員制度を利用して支援しています。
いずれにしても、YATAでは日本酒はもちろんですが、それをお客様に楽しんでいただけるようご案内するスタッフも主役ですので、唎酒師の資格取得に限らず、人材育成にはスタッフと一緒に取り組んでいます。

 
山本代表にとって「唎酒師」とは?
 確かにビジネスですが…

私がこれだけ日本酒にのめり込んだひとつの要因にも唎酒師の資格取得がきっかけになっています。YATAにとっても、唎酒師の資格取得の過程で学ぶ様々な内容は、お客様に楽しんでいただく、スタッフが生き生きと仕事ができるベースであることも間違いありません。
私も含めて、日本酒を扱う仕事に就く者にとっては、たとえば「お客様へ最良のご提案をしよう」とか、そのためにしなければならないことは何か?とか、仕事に取り組むうえでのモチベーションを高めてくれるものだったり、そうしなければならない義務の源だったり、あるいは、その成果をお客様に認めていただくうえでの保証ツールだったり…。
確かに、YATAの代表でもありますけど、個人としても世に恥じない仕事をしようと思わせてくれる源泉?(笑)です。