こんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」の北井です!
日本酒にあまり詳しくなくても「大吟醸」という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
なんとなく「高級な日本酒よね?」とか、ちょっと詳しい方なら「大吟醸はワイングラスで飲むといいのよね?」なんてイメージを持っているかもしれません。
今回はそんな大吟醸の基本や魅力を他の「吟醸」と名のつく他の日本酒との比較もしながら解説いたします!
そもそも大吟醸を名乗るには?
酒類業組合法という法律で決められている「特定名称酒」という基準が現在の日本酒を語る上で基本となり、今回のテーマの大吟醸や純米酒、本醸造酒など計8つに分類されています。
ポイント1「日本酒の中身」
「原料に何を使ったか」「お米をどれだけ磨いた(削った)か」「吟醸造りをしたか」といった日本酒の原料や製法などの、いわば「日本酒の中身」の違いで分類されているんですね。
大吟醸の原料は「米」「米麹」「醸造アルコール」と規定されています。
ポイント2「精米歩合」
お次のポイントは「精米歩合」です!
大吟醸の精米歩合は50%以下と規定されています。
「精米歩合」とは「どれだけお米を削って日本酒の仕込みに使ったか」を表す数値のことです。全く削っていない玄米の状態が精米歩合100%で、精米歩合60%だと玄米の表層部40%を削って60%が残っている状態です。
削り飛ばした方の数値じゃなくて「白米として残っている方の数値」なんですね!
ですので大吟醸酒を名乗るためには半分以上お米を削る必要があります。
これだけ贅沢にお米を削る理由は「お酒の味わいをスッキリと綺麗にするため」です。お米の表層部にはタンパク質や脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分はお酒の仕込みに使う場合は雑味につながることがあるので、日本酒の仕込みにおいては贅沢にお米を削るんですね。
その最たるものが大吟醸です!
近年では精米歩合が一桁という驚きの大吟醸まで登場していますよ!
ポイント3「製法」
お次のポイントは「製法」です!
「吟醸造り」といわれる製法で仕込まれた日本酒が大吟醸や吟醸です。
具体的には低温で長期間発酵させる製法のことで、大吟醸などのラベルを見るとたまに「長期低温発酵」と書かれていることもあります。
日本酒のアルコール発酵の主役は酵母菌という微生物で、タンクの中で米麹がつくる糖分を酵母菌が食べてその代わりにアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を出します。
アルコール発酵は「甘いもの(糖分)をいただいたので、かわりにお酒(アルコール)でもどうぞー!」という酵母菌の気遣いによるものです。
お酒好きの方は酵母菌に感謝しましょう。
酵母菌は微生物なので発酵しているタンクの中の温度が高い方が活動しやすくどんどん糖分を食べてスピーディにアルコールに変えていけるのですが、それが行きすぎると狙っていた香りや味わいにならない可能性が高まります。
そのため日本酒造りは基本的には秋から春までの気温が低い時期に行われます。その中でも大吟醸酒は真冬に仕込むことが多く、酵母菌にとっては活動がしにくい状況でじわじわとゆっくり発酵させていきます。
そうすることでリンゴやバナナのようなフルーティな香り(吟醸香)がより引き出され、味わいも繊細で上品なものになります。
まとめると吟醸造りの長期低温発酵とは
「酵母菌さん、今回は大吟醸なので納期までの期間をたっぷり取っていただいて大丈夫です!その分ゆっくりと丁寧な仕事をしてくださいねー!」
というイメージです。
大吟醸と吟醸の違い
ここまで「大吟醸」に絞ってお話してきましたが、「そういえば純米大吟醸とか吟醸とかもあるよね?どう違うの?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思います。「吟醸」と名のつく日本酒は「吟醸」「大吟醸」「純米吟醸」「純米大吟醸」の4つです。
4つの「吟醸」の違い
低温でじわじわと丁寧なアルコール発酵をさせる「吟醸造り」は共通していますので「フルーティな香り」や「上品でなめらかな味わい」という傾向は、基本的には同じです。
違いの肝となるのは「米・米麹以外に醸造アルコールを使用したかどうか」と「精米歩合の違い」です。
原料に「醸造アルコール」を入れずに米と米麹のみを使用し、吟醸造りで醸した日本酒は「純米」を頭につけて「純米吟醸」や「純米大吟醸」と名乗ります。
「醸造アルコール」とはいわゆる甲類焼酎と同じ製法で造られた蒸留酒のことで、原料は糖蜜(廃糖蜜)やとうもろこしを使用することがほとんどです(米を使用したものもあります)。甲類焼酎ってウーロンハイや緑茶ハイ、レモンチューハイなどに使われるスッキリした焼酎のことですね。
ここで!「お米を贅沢に削って時間をかけて丁寧に仕込んでなんで最後甲類焼酎(醸造アルコール)入れるの?純米の方がなんかよくない?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。気持ちはわかります。しかし、醸造アルコールにはちゃんと役目があるのです!
発酵期間の最後の最後に醸造アルコールを少し添加すると、もろみを搾って日本酒と酒粕に分ける時に酒粕に持っていかれそうな香気成分を日本酒の方に引っ張ってきてくれるのです。
大吟醸の一番の特徴ともいえるフルーティな香りをより引き立たせてくれるのですから重要な役目を果たしてますよね!
そういう目的で醸造アルコールは添加されているので、一概には言えませんが純米大吟醸より大吟醸の方が香りが高く、味わいもスッキリしている傾向があります。
そして「精米歩合」の違いが吟醸酒か大吟醸酒かの違いです(純米吟醸と純米大吟醸も同様)。
精米歩合60%以下という規定が吟醸酒と純米吟醸酒で、精米歩合50%以下という規定が大吟醸酒と純米大吟醸酒です。「大」がつくかどうかは「より贅沢にお米を削って味わいをスッキリさせたか」という違いがポイントです。
お米の磨きが贅沢でスッキリと上品な味わい、フルーティな香りなのが「吟醸」で、さらにその贅沢感をアップさせたのが「大吟醸」と言えるでしょう。
大吟醸のお酒に定評のある酒蔵の方から「最初から純米大吟醸か大吟醸かを決めているわけじゃなくて、もろみの発酵を見極めて香りがしっかり出てたらその特徴をより活かすために醸造アルコールを添加して大吟醸にするんです。もろみの意見を聞くんですよ。」
というお話を聞いた時は思わず唸りました。酵母菌をはじめとする微生物たちへのリスペクトが感じられますね!
そして「精米歩合」の違いが吟醸酒か大吟醸酒かの違いです(純米吟醸と純米大吟醸も同様)。
精米歩合60%以下という規定が吟醸酒と純米吟醸酒で、精米歩合50%以下という規定が大吟醸酒と純米大吟醸酒です。「大」がつくかどうかは「より贅沢にお米を削って味わいをスッキリさせたか」という違いがポイントです。
お米の磨きが贅沢でスッキリと上品な味わい、フルーティな香りなのが「吟醸」で、さらにその贅沢感をアップさせたのが「大吟醸」と言えるでしょう。
大吟醸や吟醸の楽しみ方!
最後に、「大吟醸」や「吟醸」の楽しみ方のコツをいくつかお伝えします。
日本酒をより美味しく飲むために気にしたいポイントが「温度」と「器」です。大吟醸が持つフルーティな香り(吟醸香)をもっとも感じやすいのが10〜15℃といわれます。これは意外と簡単で、家庭用冷蔵庫に入れておいて冷蔵庫から出してグラスに注いですぐ飲めばこの温度帯になります。
器はおちょこでもいいですが、より香りを楽しむためには湾曲性の高いブルゴーニュ型のワイングラスなどが特におすすめです。
「合わせる料理」は、フルーティな香りと上品で軽やかな味わいと似たようなものが、相性がいいですね。
「鶏ささみのたたきポン酢」や「山菜の天ぷら、おひたし」などの爽やかな和食や、洋食でいうと「白身魚のカルパッチョ柑橘風味」「タコのマリネ香草風味」などが、相性のいい料理の一例です。
僕は刺身ではマグロが大好きなのですが、「今日はいいことがあったから贅沢にトロを食べるぞ!」「普段は赤身がいいよねー。」みたいな感じで贅沢な大吟醸や普段飲みの純米酒・本醸造を飲み分けています。そんな風にシーンごとに日本酒を飲み分けできると、大人の呑兵衛の仲間入りですね!
今夜は日本酒で乾杯!皆さんも酔い夜を。